トップページに戻る
  少年リスト   映画リスト(邦題順)   映画リスト(国別・原題)  映画リスト(年代順)

Super Boy スーパー・ボーイ

イスラエル映画 (1998)

トム・アヴニ(Tom Avni)が単独主演する 子供向きのコミカルなSFクライム・アクション映画。子役が主演するイスラエル映画でコミカルなものは珍しく、主人公の名前がトムなので、アメリカ映画のような雰囲気がある。この映画に一番近い雰囲気のものは 『Blank Check(ブランク・チェック/100万ドル大作戦!)』(1994)、ハイ・セキュリティを子供が破るという点では、『Catch That Kid(ミッションX)』(2004)を思い起こさせる。主人公のトム〔子役と同じ名前〕は、気弱な虐められっ子で、隣に座っているアビガイルに「好き」とも言えない引っ込み思案の少年。胃けいれんを よく起こすのは、神経症によるものか? そんなトムが気楽に会いに行けるのは、近所に住むガンツ教授。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドクに似た不雰囲気の白髪もじゃもじゃ博士。映画は、トムが銀行強盗のあおりを食らって歩道で頭を打ち、昏睡状態になったのを知った教授が、秘密裏に開発した「脳の働きを10%から100%に上げる薬」をこっそり飲ませるところから、新たな展開へと移行する。薬が効いて目覚めたトムは天才児になるが、マスコミに紹介されて天狗状態にり、教授やアビガイルのことなど無視するようになる。逆に、その才能に目を付けた悪党のボスが、高度のセキュリティで保護されたダイヤモンドを、「知恵比べのゲーム」に見立てて、トムに盗ませることを思い立つ。かくして、映画は、学園もの→SF→クライム・アクショへと移行する。見事盗み出した後、TVでそれが「本物の強盗」だったことを知るが、運悪く、薬の効き目もなくなってしまう。普通の少年に戻ったトムは、悪党が身を守るために誘拐したアビガイルを救い出し、盗品を奪い返すことができるのか? 正真正銘のアクション映画が始まる。

11歳のトムは、何かあると胃けいれんを起こす、目立たなくて、成績も良くない男の子で、クラスでは虐めの対象になっている。そんなトムが、近所に住む仲良しの「ガンツ教授」こと、科学者兼発明家の白髪の老人を訪れると、「頭脳の働きを活性化させる薬」が完成したことがわかる。そして、教授が銀行へ研究費を引き出しに行くのに同行し、銀行近くの歩道でアイスキャンディーを食べていると、銀行を襲った二人組の乗ったスクーターにぶつかり、頭を打って意識不明になる。責任を感じた教授は、出来立ての薬を飲ませて 意識を回復させようとするが、間違えて希釈液ではなく原液を飲ませてしまう。その効果はてきめんで、トムは目をパッチリ開くと、甘いものを大量に食べる。そして、これまで脳の中にはあったが埋もれていた知識がすべて活性化し、「天才」のようになる。それが、マスコミで取り上げられると、クラスでは一躍人気者なり 舞い上がる。しかし、そのニュースを聞いていた悪いボスが、トムを利用してイスラエルで最も高価なダイヤモンドを、厳重に警備されたフロアから盗み出させようと策略。トムは、部下の二人組に誘われてボスの家まで来ると、ボスが用意した「才能へのチャレンジ」をことごとくクリヤーし、高慢の鼻が伸びきったところで、「最後のチャレンジ」として、「ボスが自ら所有するダイヤモンドを盗み出せるか」という課題が出され、トムはそれに挑戦する。実際は、史上最大の盗難事件なのだが、トムは、頭脳と身体能力の高さを見せつけられるゲームだと思い込んでいる。そして、見事に成功する。しかし、TVのニュースで、自分のやった行為が重大犯罪だと分かった時には、薬の効果も消えて、普通の少年に戻ってしまった。さらに悪いことに、警察に通報しないよう、トムの好きな少女が人質として取られ、ボスが逃走用に用意したヨットに連れ込まれる。トムは、教授に頼んでもう一度薬〔実は プラセボ〕を飲ませてもらい、少女を救出し、ダイヤモンドを取り戻すという難題に挑戦する。そして、トムは、自力でそれを達成したことで、自分の殻を破ることができた。

トム・アヴニは、映画出演時11歳。これが映画初出演とは思えない芸達者ぶり。まさに百面相だが、特筆すべきなのが、英語の “cheeky” がぴったりの場面。少々傲慢で 小生意気だが 性悪ではない少年を、見事に演じています。淡いブルーの瞳と相まって、とても憎めません。残念ならが、子役としての活躍はこれ1本のみ。


あらすじ

トムは胃けいれんを起こすくせのある気弱な少年。クラスでは虐められ、好きな女の子に声をかける勇気もない。そんなトムのある朝。ベッドで愛犬に話しかけている。「今度は、うんと勉強したから、胃けいれんなんか起こさないぞ」(1枚目の写真)。映画では、その前に、旧約聖書の『サムエル記』第17章に出てくる 「ペリシテ軍の巨人兵ゴリアテに敢然と立ち向かう、イスラエル人の羊飼いの少年ダビデの戦い」 を、空想しているシーンが映される。ゴリアテは虐めっ子、ダビデはトム本人だ。予習は、かくも十分なのだが… 両親はキッチンでトムのことを話している。母:「トムに水泳教室のこと話してもらえた?」。父:「忘れてた。大事な会議があったからな。どうして水泳なんか? 君と同じで、水を怖がってるだろ?」。「あなただって、ピアノのレッスンさせてる」。「君と同じで音痴だから」。これで、トムは、カナヅチで、ピアノも満足に弾けないことが分かる〔重要な伏線〕。その後、映画はもう一度、トムの空想に戻る。トムは犬に話しかけながら、クライマックスの 「ダビデが投石器をぐるぐると回しながら、向かってくるゴリアテ目がけて石を投げつける」 シーンを再現しようとする(2枚目の写真、矢印は投石器、着ているのは紀元前10世紀頃のイスラエル人の服)。実際にトムが回していたのは、ただの布(3枚目の写真、矢印は振り回している布、着ているのはパジャマ)。母に止められ、「何してるの、トム。パジャマを着替えないと、学校に遅れるわよ。ほら、急いで」と叱られてしまう。
  
  
  

学校にぎりぎり間に合ったトム。教室に入ると、他の生徒は全員席についている。トムが机の間の通路を通って席につこうとすると、一番前の席に座っていた「ゴリアテ」こと、虐めっ子が、足を出して、それにつまづいたトムがばったり倒れる(1枚目の写真)。生徒全員がそれを見て笑う。笑わなかったのは、トムと一緒の机のアビガイルだけ。お互い「好き」だとは言っていないが、気を惹かれている同士なので、虐められてばかりいるトムが不憫なのだ。トムが 起き上がって席につこうとすると、後ろの席の男の子が、「気にするな、トム」と背中を叩き、紙を貼り付ける。そこに書いてある手紙のヘブライ文字は子供の手書きなので判読が困難。もし、“חללית אני” だと、ヘブライ語は右から左に読むので、「僕は宇宙船」という意味になる〔バタン倒れたからか?〕。また、笑い声が起きるが、紙を外してくれたのもアビガイル。トムが座ると、アビガイルは、「これ、昨日の陶芸のクラスで、あなたのために作ったの。幸運のお守り」と言って、丸いものを見せる」。「ありがとう。それ、何?」。「亀よ」(2枚目の写真、矢印が亀)。手に取ったトムは、「頭はどこ?」と訊く。「引っ込めてるの」。そこに担任が入ってくる。「みなさんお早う。テストの準備はしてきましたね?」。聖書に関するテストが始まると、トムの頭の中は、今朝の空想でいっぱいになる。母によって邪魔された投石器の場面だ。空中の一点をみながら、そのシーンに入り込んでいるトム(3枚目の写真)。先生が、それを見つけてやってくる。「トム、どうしたの? 何も書いてないじゃないの。あと、10分しかないわよ」。「気分が悪いんです」。生徒達から一斉に「また、胃けいれん」という声が上がる。先生も、「また?」とあきれた声で言うと、「じゃあ、保健室に行きなさい」と、出て行かせる。
  
  
  

帰宅したトム。犬に向かって、「あれだけ予習したのに… お前、見てただろ。だけど、この けいれんが…」と言うと、家を出て、行きつけのガンツ教授の家に向かう。そこは、いかにも近所迷惑な発明家の家らしく、トムが玄関に近づくと爆発音が聞こえ、中から白煙が噴き出してくる。トムが恐る恐る玄関をノックすると、教授が出てきて、「ああ、トムか! ラボでちょっと問題が起きてな。たいしたことじゃない」と言う。「10時半だが、試験はどうした? またけいれんか?」と訊く。頷くトム。「で、看護婦が帰宅しろって?」。トムは、「ガンツ先生、僕の胃に効く薬 ありません?」と尋ねる。「何かあげよう」。トムが中に入って行くと、いつものようにオウムが出迎えてくれる。トムは、オウムと話しながら、試験管に入った「薬」を渡される。「ガンツ先生、これホントに効くの? 中味は何?」。「化合物だ。水素2つに酸素1つ。H2Oだ」(1枚目の写真、矢印は水の入った試験官)。トムの年齢では「H2O=水」だとは知らないので、「わあ、先生、H2Oって効くんだね。もう気分が良くなった」と単純に喜ぶ。その後、トムは、赤い液体が大量に入った実験装置のそばに寄っていく。「これ何? 新しい研究?」。「秘密にできるか?」。そう言うと、教授はトムを呼び寄せ、「前に 言ったことがあったかもしれんが、脳の何%が使われてると思う?」。「うん、10%だよ」。「よくできた」。「それが、100%使えたら どうなると思う? わしは、若い科学者だった頃 脳の機能を高める薬を作ろうとした。笑われたがな」。トムは、物珍しげに赤い液体を見ている(2枚目の写真)。「だが、息子や孫が海外に移った後、わしはもう一度研究に取り組んだ」。教授は、研究の経過を書いた紙をトムに渡す。その時、オームが騒いだので、教授が見に行き、うっかり手に持っていた赤い液体入りのスポイトを 「餌自動やり機」の上に置いてしまう。あとはお決まりの展開で、赤い液体がオウムの飲み水に入ってしまい、それを飲んだオームの知力が急に上昇(3枚目の写真)。教授は、自分の研究が完成したと大喜びする。
  
  
  

教授は、その後すぐ、材料購入費を引き出すため銀行に行く。トムも一緒に行くと申し出るが、それはアイスキャンディーを買いに行くためで、銀行の中には入らない。教授は、結構多額の現金を下ろしたが、運悪く、ちょうどその時、銀行強盗が入ってくる。半分コメディ映画なので、強盗もずっこけ二人組だ。銀行を襲うというよりは、銀行にいた客を襲っただけで出て行き、サイドカー付きのピンクのスクーターで逃げる。歩道を走って逃走するスクーターは、歩道の真ん中で後ろを向いてアイスキャンディーを食べていたトムに気付き、避けようとしたが間に合わず、はねてしまう(1枚目の写真)。二人組は、子供をはねたことに心配し、トムの頬を叩くと、その時だけ目を開け(2枚目の写真)、二人組が安心して去ると、気を失う。次のシーンは、病院のベッドで横たわるトム(3枚目の写真)。脳震盪を起こし、昏睡状態だ。急を知ってお見舞いに来た教授は、直接は関係ないものの、脳震盪と聞いて責任を感じる。
  
  
  

家に帰った教授は、赤い液体の実験装置の前で考え込む。そして、普通に戻ったオウムを見て、「10時間前、お前は天才だった。トムは意識不明だ」と言いつつ、薬ビンに入った水に7滴赤い液体を入れる。「きっと、これでうまくいく」。そう言うと、ビンのラベルに「希釈(מהול)」と記入して、原液の入ったビンの横に置く(1枚目の写真、左側のビン)〔ラベルの文字は、筆記体で書かれているので、印刷体とは全く違って見える〕。しかし、うっかり博士は、オウムと話しながらポケットに入れる時、間違えて原液の入ったビンを取ってしまう。そして、夜、病院に行くと、「トーマス、効いてくれるといいな」と囁きつつ、トムの口にビンの中味を全部注ぎ込む(2枚目の写真)。家に戻った教授はビンを間違えたことに気付く。その瞬間、画面が変わり、トムの目がパッと開く(3枚目の写真)。淡い空色の虹彩なので、瞳孔がくっきり見える。
  
  
  

昏睡状態から一気に目覚めたトムは、手に付いた管を全部外すと、「キャンディーが欲しい!」と叫ぶ。この薬は多量の糖分の摂取を要求するという設定だ。そして、部屋から出ると、食べ物を求めて走りまわり病院内は大混乱。ここから18分間コメディ部分が続く。トムは、医師団に取り押さえられ(1枚目の写真)、検査室に連れて行かれる。最初に注目されたのが、「甘い物に対する制御不能の願望」、そして、「肉体および精神活動の上昇」。そこで、医師が電卓を手にして、「7,458×9,632は?」と質問すると、たちどころに「71,835,456」と答える(2枚目の写真)。「アメリカ大陸の発見は?」。「1492年、コロンブス。彼はインドだと思った」。「足から履物を脱ぎなさい」。「『出エジプト記』、3の5」。トムの変わり様に目をつけた記者は、翌日の新聞の一面に大々的に記事を載せる(2枚目の写真)。新聞には、最上段に赤地に白抜きで「スーパー・ボーイ〔בוי םופר〕」と書かれ、その下に「衝突事故、天才を生む〔גאון הולידה וברח פגע תאונת〕」と書かている。
  
  
  

新聞記事を受けて、翌日病院で開かれた記者会見では、トム・アヴニの “cheeky” な魅力がたっぷり楽しめる。トムは、冒頭、3個のりんごでお手玉をしながら、自分の病状を、医師の専門用語で説明する。「皆さん、僕は脳震盪で一時的に意識不明になりました。大脳半球が回転し、網様体賦活系が電気生理学的に機能障害に陥ったことによるものです」。それから、マスコミが質問する。「普通の少年が、一夜にして天才に。上手に対処できますか?」。トムは、「そんなの当然じゃん」といった顔をしただけ(1枚目の写真、口が開いているのは りんごを食べているせい)。「あなたのお友だちは、ニュー・トムをどう受け止めるでしょうか?」。「これまでも甘党だったのですか?」。「どうして、あなただけに起きたんだと思います?」。立ち上がったトムは、「答えは全部イエスです。両親に感謝したいと思います。因果応報ですから。ところで、もっと知的な質問はないんですか?」。犯罪担当記者が、トムと衝突した銀行強盗の顔を覚えていないかと訊くと、「逆行性健忘」により事故の前後の記憶はないと答える。記者に混じって聞いていた二人組は安心して退室する。代わって入って来たのがアルゼンチンのTVタレント。自国の子供たちが知りたいとした上で、サッカーで頭にボールが当たったら天才になれるか、と質問する。それに対し、トムはスペイン語で「悪くなるだけ」という趣旨の回答をするが、その時の表情がコロコロと変わり何とも面白い(2・3枚目の写真)。スペイン語はどうやって覚えたと訊かれ、母がTVを見るのが好きなので耳に入ったと答える。この会見の様子をTVで見ている1人の悪人がいた。銀行を襲った二人組のボスだ。彼は、今まで果たそうと思い出来なかった夢をトムに託そうと考える。トムは、厳重に警備されているダイヤモンドを盗むに足る、「体の小ささ、敏捷さ、天才的頭脳」 の3つを兼ね備えていると踏んだからだ。そこで、ボスは、二人組に、トムを「拉致」ではなく、「丁重に」に連れて来るよう命じる。次のシーンでは、帰宅したトムが、ピアノでモーツアルトの「トルコ行進曲」を滑らかに弾いている。その表情もまた面白い(4枚目の写真)。息子を満足げに見守る母は、「次は、大学かしら」。一方、教授は、薬のことを話してやらないと、と独りゴチている。
  
  
  
  

両親は、メディアの騒動がトムに与える影響は心配だが、明日学校に行けば正常に戻ると話し合っている。そして、場面は翌日の学校に切り替わる。クラスの中は正常ではない。虐めっ子1人を除く全員がトムを囲み、「昨夜のTV見たわ。すごかった」。「友だちになってくれる?」。「僕のパパもそう言ってた」。「僕たち、一番の仲良しだよね」。「いつも味方してただろ」〔背中にイタズラ紙を貼った子〕。「友だちになってよ」。「私も」。「僕も」…。トムは、机の上に立ってふんぞり返っている(1枚目の写真)。そこに担任が入ってくる。みんなは席に戻り、アビガイルが「トム、私 病院に行ったのよ。お母さんから聞いた?」「この前 あなたが忘れてった亀、持って来てあげたわ」と見せるが、トムは眼中にない(2枚目の写真、矢印が亀)。先生は、「お帰りなさい、トム。元気になれてよかったわね」と歓迎。トムは、すかさず、「先生、聖書の問題、再試験して下さい」と頼むと、「必要ないわ。今、校長先生と話してきたの。あなたのことで特別な会議があって、大学に行かせるべきないかって。でも、このまま、このクラスにいてもいのよ。わが校にとっても名誉なことだから」。こんな状況では、トムはどこまでも助長してしまう。先生は授業に入り、1人の生徒に「13節を読んで」と言う。生徒は、「ミカルは一つの像をとって、寝床の上に横たえ、その頭にやぎの毛の網をかけ、着物をもってそれをおおった」と読み上げる。『サムエル記』の第19章の13節だ〔ミカルはダビデの妻〕。先生は、「どういう意味ですか?」と質問すると、トムが手を上げ、「彼女はダビデのベッドに人形を置き、上から毛布をかけたので、みんなには彼が眠ってると思ったけど、とっくに逃げてたんです」と説明し、また褒められる。そして、先生が、これについて5つのグループに分かれて話し合いましょうと言うと、虐めっ子1人を除いて全員がトムの周りに集まる。授業中もこんな調子なので、終わってからもトムの後には生徒がひっついて離れない。他のクラスの子からはサインも頼まれる。1人寂しくしているのはアビガイルだけ。トムが、見向いてもくれないからだ。様子を見に来た教授が声をかけると(3枚目の写真)、「これ、朝から渡そうとしてるけど、近寄ることもできないの」と言って、亀を見せる。教授は、詳しくは言えないが、直に元に戻るからと慰める。
  
  
  

そんなトムを、二人組がこっそり見ている。トムが、マスコミにうんざりして自転車で逃げ出すと、二人組は、前と同じピンクのスクーターで追いかける。しかし、トムは2人がレポーターだと思って どこまでも逃げる。ショピング・センターでのドタバタ追跡劇の後、オンエア中のスタジオに入り込み、トムが5人のダンサーに混じって踊るシーンがあるが、いい線いっている。なかなかのタレントだ。二人組はようやくトムを捕まえ、レポーターではなく、「ボスが会いたいと言ってる」と話し、お菓子をいっぱい見せて釣ろうとする。「知らない人からもらっちゃいけないんだ」。「ボスも、君がそう言うだろうと言ってた」。トムは、ようやく興味を惹かれる。ボスの名前を聞くと、「ビル・ロシュデ。ロシュデ論理的思考会社の社長」と答え、「TVで君を見て感心してた。そして、君には知的挑戦の権利があると話してた。ただ、天才であろうが なかろうが、君には出し抜けないだろうとも」。この言葉は、トムを刺激した。そして、挑戦を受けようと考え、会ってみたいと自分から言い出す。そして、二人組に案内されてボスの豪邸に。トムが着いた時、ちょうどボスはプールから上がったところだった。ボスは、「これはこれは スーパー・ボーイのお出ましだ」と言い、プールの際に立ったトムの胸を少し押しながら、真の能力をテストする前に、水でも飲んでみないかね、アインシュタイン」と突き落とそうとする。「泳げないんだ」。「我らがヒヨコ君は、水が怖いときたか。じゃあ、100%スーパーじゃないんだな、この坊やは」。トムは 泳げないことでバカにされたが、ボスの本名がビルではなく、それは、「ビル・ゲイツやビル・コスビーへの憧れ」から選んだ名だと知ると、逆襲に出る。「あんたの名前、何度もくり返してるとどうなるか知ってる?」。「何のことだ?」。「ちょっと待ってて」。トムは、二人組の1人に「ビル」と言わせ、もう1人に「ロシュデ」と言わせる。それをくり返してリズムを付けてトムが歌う。ビル・ロシュデの順番が、いつしか逆になる。「♪ロシュデ・ビル(דביל ראש〔アホンダラ〕、ロシュデ・ビル。ロシュカ・ビル(חציל ראש〔カボチャ頭〕)、デイマミル(מגעיל די〔胸くそ悪い〕)。インファンティール(אינפנטיל〔ガキとおんなじ〕)、ロシュデ・ビル」。ボスは、腹が立ったのを抑え、トムの顎を指で押し上げると、「小さな傘の下に、2頭の大きな象。でも、濡れない。なぜだ?」と訊く。トムは、指をどけると、「雨が降ってないからさ。大人になれよ、ロシュデ」と言って、指を元に戻すと、バカにしたようにニンマリする(2枚目の写真)。ボスをてんでバカにした態度だ。それでもボスは切れない。何せ、トムにはダイヤを盗んでもらわなくてはならない。「今のは、ただのウォーミング・アップだ。中に入れ、スーパー・ボーイ」。最初にボスが渡したのはルービック・キューブ。トムは5秒で完了。「何だよ、ナフム。あんた未熟だね」〔ナフムは、ボスの嫌いだった本名〕。「まだ前座だ。これから本番に入るぞ」。次は、ボスとのチェスとチェッカーのダブル・ゲーム。トムはチェッカーの駒を一気に総取りし、同時にチェスもチェックメイト(3枚目の写真)。その時、トムは、ボスの左手の3本の指にはめられた3つの指輪を見て、「BILL〔ביל〕だ、すごいや!」と感心する。
  
  
  

ボスが次に要求したのが、500ピースのジグゾーパズル。最初トムは60秒と言ったが、実際には34秒で完成。「じゃあ、26秒居眠りできるね。あんたが 次のガキ用ゲームでうんざりさせるまで」。トム・アヴニの「生意気な」顔は冴えるが、写真が多くなるのでカットする。「この うぬぼれ坊主め、気に入ったぞ」とボスは笑いかけると、「壁の絵が見てみろ。俺の母のママ・リーザだ」と言う。「ママ・リーザ? 誰が描いたの? レオナルド・デ・ハラータ(אטרח〔でたらめ〕)かい?」〔断るまでもないが、モナ・リザとダ・ヴィンチのギャグ〕。これにはボスも激怒した。しかし、怒りを静め、絵の裏は金庫になっていて、ダイヤル錠は数字が80まであり、右に2回、左に2回だと言い、「可能な組み合わせの数は?」と訊く。「40,960,000」。ボスは、「これが開けられたら、ちょっとしたサプライズがあるぞ」と言う。さっそく挑戦するトム(1枚目の写真)。音を聞くだけで見事に開けると、中にはトムの頭より大きなお菓子が。それをペロリと平らげたトムを、ボスは、模型のところに連れて行く。「俺は、ダイヤモンドを特別な場所に保管してる」と言い、建物の模型を見せる。そして、そのビルの12階に「ロシュデ家の宝」が置いてあると言って、そのフロアを開いて見せる(2枚目の写真)。そして、7人の武装した警備員、警報装置、監視カメラ、床の探知器、動くレーザービームで守られ、さらにダイヤは電子光学装置の上に1つずつ置かれていると説明する。「で、僕は何をするの?」。「もし、捕まらずに持って来られたら、君は最高だ」。トムは、成功した時のご褒美として、ボスが指にはめているような、「トム〔םות〕」の文字を表す3つの指輪を要求する(3枚目の写真)。トムは、ロシュデの所有物を持って来るだけの「知恵比べ」だと思っているので、これが大胆なダイタモンド強盗だとは全く気付いていない。
  
  
  

ここからは、クライム・アクション。黒づくめの服装に身を包んだトムは、腰周りに小道具やロープを付け自宅の窓から忍び出ると、22時に 家の近くで待っていた二人組のバンに乗り、目的のビルの地下駐車場に入る。バンから下りたトムは、「今、22時20分。時刻を合わせて。僕は22時35分きっかりに戻る」。トムは、地下の配管用の通路から廊下に出ると(1枚目の写真)、すぐ前にあるエレベーターのセキュリティを解除して中に入り12階へ直行。そして、空調用ダクトに登ると、そこを匍匐前進し、ダイヤモンドの置いてある場所の真上まで来る。そして、監視カメラの映像を一時遮断すると、インスタントカメラで撮った写真をカメラの前に置く(2枚目の写真)。今までの顔とは別人のようだ。そして、バッグを ダイヤモンドを吊った台の下に滑るように投げると、重力センサーが働いてレーザー光線が出る。トムは動き回るレーザーを飛び越えたり、下に潜ったりしながら(3枚目の写真)、ダイヤモンドを吊った台の前まで到達(4枚目の写真)。このシーンでは、運動能力の高さを見せてくれる。あとは、持参した同じ重さの代替物でダイヤを置き換えていくだけ。トムは22時35分ちょうどに、ダストシュートから紙の山の上に落下して帰投。「楽しかった」と笑う。帰りのバンの中で、トムはダイヤを二人組に渡し、「ロシュデ・ビル〔アホンダラ〕に言っといて。明日、学校が終ったら 指輪をもらいに行くって」。
  
  
  
  

翌朝、ボスは、港でブローカーに会い、明日の午後までにパスポートとヨットが用意できると告げられる。ボスは分厚い札束を渡し、「明日の正午ちょうどだ」と言い、気前の良さにブローカーもOK。その時、ボスは、二人組は置き去りにして1人で行くと打ち明ける。学校では、トムが相変わらず生意気振りを発揮している。男の子が、「君の宿題、やらせてくれる?」と頼むと、「そりゃいい。僕のバッグ持ってけよ」と渡す。今度は、女の子が、「私にやらせてくれるっていったじゃない」。「じゃあ、明日やってよ」。そして、亀を手渡そうとするアビガイルには、「その、バカげた首なし亀を寄こす気かい?」と、哀れむように訊く(1枚目の写真)。アビガイルは「違うわ。サイテーって言いたかったの」と背を向ける。そして、近くで見守っていた教授に向かって、「彼、天才かもしれないけど、鼻持ちならない天狗になっちゃった」と嘆く。教授は、トムと話し合ってみるからと慰める。教授は、トムに話しかけ、何とか彼女をとりなそうとするが、返ってきたのは、「もし、彼女が、今の僕を受け入れないんなら、興味のかけらもないね」という すげない言葉。さらに、「もし、あんたが彼女の肩を持つんなら、もう僕の知ったことじゃない」。「私たちは、君の友達だろ」。トムは、迎えに来た二人組を指差し、「彼らが僕の友だちだ。あんたなんか必要ない」と背を向ける。教授が、「トム、待ってくれ。1分くれ。重要なんだ!」と声をかけると、「ほっといてよ!」と拒否される(2枚目の写真)。二人組を「うさんくさい」と感じた教授は、アビガイルを連れて後を追う。
  
  

再度 やって来たトムに、ボスは大機嫌で指輪を渡す。薬指に「T〔ת〕」、中指に「O〔ו〕」、人差し指に「M〔ם〕」をはめてやる〔再度書くが、ヘブライ語は右から左に読むので、順番はこれで正しい〕。そして、笑いながら頭を撫でて、「君は最高だ」と褒める(1枚目の写真)。一方、教授とアビガイルはボスの邸宅の前の道路に置きっぱなしのサイドカー付きのピンクのスクーターを発見。門扉のチャイムを鳴らす。ボスはそれにドキっとする。訪問客などあるハズがないからだ。ボスは、二人組に「お前ら つけられたのか?」と問いただす。「まさか、ボス。誓って」。しかし、ドアを開けると、そこにいたのは教授たち。「私たちは、トムの友達だ。家に連れに来た」。「我々もトムの友達だ」。教授は、「あなたが誰で、何が望みかは知らんが、即刻引き渡して欲しい」と迫る(2枚目の写真)。トムは、「なんで、後をつけたのさ? 望みは何?」。「ご両親は、知っとるのかね?」。「あんたに関係ないだろ」。「そうかな? なら、電話して訊いてみよう」と言うと、教授は脇にあった電話機を手に取る。これ以上ゴネられると元も子もなくなると思ったボスは、「あの人と、行くんだ。また すぐ会える」と、トムを説得する(3枚目の写真)。帰り際に、二人組が「じゃあな、トム」と声をかけると、それを聞いた教授は、「その声、聞いたことがある」と言ったので、ボスはドアを閉めて追い払う。
  
  
  

教授は、途中でアビガイルを車から下ろし トムだけになると、薬のことを話そうとする。結構長い会話なので、要約しよう。まず、トムは、「あんた、友だちの前で僕に恥をかかせた」と怒る。それに対し、教授は、「あの人達は、君の名声を利用しようとしとる」と言い、トムは、「名声は僕のものだ」と反論、教授:「そうか? なら教えてやる。君のじゃない」。トム:「僕のだ!」と怒鳴って車を下りる。次のパートは、天才になった原因について。トムは、「頭への打撃が、僕の脳を変えたんだ」と言うと、教授は、「打撃じゃない、薬だ」と、初めて打ち明ける。「薬? 薬なんか飲んでない」。「君が入院してる時、病室に行って飲ませたんだ」。そして、数滴のつもりが、うっかり濃縮液を飲ませたとも。「君のすべての能力は、間違ってついてしまったんだ」(1枚目の写真)。トムは、「そんなの信じるもんか。これは僕だ! 僕の脳みそだ!」。「頼むから聞いてくれ。薬の効果は一時的に過ぎん。オウムでは 8時間で消えた〔トムは3日目〕。君がいつまでもつか分からんが、いつ消えてもおかしくはない」(2枚目の写真)。それに対し、トムは「8,932×7,256」と「8,653の平方根」を計算してみせ、「僕を、前みたいな落ちこぼれに戻すのはやめろ! みんなの笑い者だったんだぞ!」と強弁する。最後の言葉の中に、トムの恐怖と苦悩が見て取れる。そのまま家に戻ったトム。気分を晴らそうと、「トルコ行進曲」を勢いよく弾き始めるが、ミスタッチ。目の前に手を拡げて心配そうに見る(3枚目の写真)。気を取り直して弾き始めるが、またもやミスタッチ。「なぁに、疲れてイラ立ってるんだ。ガンツにはホントにムカついたからな」と自分に言い聞かせる。
  
  
  

トムは両親と一緒にキッチンにいて、TVもついている。父は、トムに税金の計算問題を出すが、トムは何のことか分からない。母が、ランチ用にチョコレート・サンドを渡すと、「チョコなんか嫌いだ」。この2つのシーンから、トムの薬効が消えたことが分かる。しかも、本人はそれに気付いていない。そして、TVでは、総額1億ドルの稀少なダイヤモン5個が盗難にあったという大ニュースが流れる。それを見て愕然とするトム(1枚目の写真)。学校に行ってからのトムは、授業中も自分がやってしまった恐ろしい窃盗のことを考えている。先生は、ダビデの物語の続きで、「ダビデは砂漠の洞穴に隠れました。助けに来たのは誰でしょう?」とトムに質問する〔サウルと答えればいいのかもしれないが、『サムエル記』24章によれば、サウルは助けに洞穴の話が出てくるが、サウルはダビデを捜しに(殺そうと)入ったのであって、助けに入ったのではない〕。トムは、「覚えてません」と答える。トムは、その後、「アビガイル」と囁きかけるが、「邪魔しないで、この うぬぼれ屋」と言われてしまう。「僕、もう行かないと。学校が終った後で、宿題のことで行くよ」。「誰もやってくれないから、自分でやる気になったの?」(2枚目の写真)。「お願いだから、許してよ。僕、今、窮地に立ってる。ダマされてたんだ。極悪人が、僕に恐ろしいことをやらせた」。「天才でしょ。自分で何とかしたら?」。「ダイヤモンド盗んだの、僕なんだ。そんなつもりじゃなかったけど、やったのは僕。君が昨日見た連中にやらされた。今は説明できないけど、これから奴らに会いにいって、徹底交渉しなくちゃ」(3枚目の写真)。そして、先生に胃けいれんだと言って抜け出す。少し後に、アビガイルも、助けてやろうと思い、仮病を使って抜け出す。しかし、トムの姿はどこにもなかった。
  
  
  

トムが、まず向かったのは、教授の家。トムを見た教授は、「驚いたな」と言い、時計を見て、「10時15分か、天才が胃けいれんか?」。「ガンツ先生、お話が」。「悪いが、今 忙しい。別の時にしてくれ」。「先生、お願い。ホントにごめんなさい。でも、ものすごく困ってるの」(1枚目の写真)。その顔を見て、教授も家に入れてやる。その頃、ボスは、二人組をイスに縛り付け、「コパカバーナ〔リオデジャネイロ〕から絵ハガキでも送ってやる」と 手切れの言葉を告げていた。その時、チャイムが鳴る。そこに現れたのは、トムを捜しに来たアビガイルだった。彼女は、ダイヤモンドの盗難にまで言及し、ボスに捕まってしまう。教授の家では、トムが、「ダマされて、ダイヤモンド盗んじゃったの」と打ち明けている(2枚目の写真)。再びボスの家に戻り、イスに縛り付けられたアビガイルに、ボスは、「昨日、お前と一緒に来た老人、何て名だ」と尋ね、名前を聞き出す。
  
  
  

ボスは、トムがいると見込んで、ガンツ教授の家に電話をかける。教授に代わって電話口に出たトムが、「警察に行って、何もかも話してやる」と言うと、ボスは、アビガイルを電話口に出させ、「俺はこれからちょっとした旅に出る。君のお友達を連れてな。俺が目的地に無事着いたら、お友達は無事家に帰るだろう。着けなかったら、その時は、考えただけで身震いするな」 と脅す(1枚目の写真)。電話を置いたトムは、教授に、「アビガイルが捕まった。助けないと」と話す。教授が警察に電話をかけようとすると、「やめて! 警察を呼んだら、彼女の命が危ない!」(2枚目の写真)。そして、「お願い、あの薬、少し飲ませて。力が要るんだ」と頼む。「薬がないと、僕はスカタンなんだ」。「分かった少しあげよう」と言った教授は、薬ビンに水を入れて持って来る。「さあ、これを飲んで」。「でも、これ透明だよ」。「改良したんだ」。トムは飲むと、「すごいや! もう効いてきた」。プラセボ効果だ。
  
  
  

トムは、全力で自転車を漕いでボスの邸宅に向かう。しかし、残っていたのは、アビガイルの「亀」だけ。彼女は ボスに連れ去られた後だった。ただ、別にも取り残されていたものがあった。イスに縛られて、口に粘着テープを貼られた二人組だ。トムは、テープを剥がして、「彼女はどこだ!」と怒鳴る。「ヨットをレンタルした。マリーナにいる」(1枚目の写真)。そして、「頼む、ほどいてくれ」と頼まれる。「だましたくせに」。「俺たちも騙されたんだ。ほどいてくれたら、手伝うから」。その頃、ボスはアビガイルを連れてヨットに向かっていた(2枚目の写真)。ブローカーが少女誘拐だと指摘すると。頭突きで気絶させ、アビガイルを船室に閉じ込め、出航の準備を始める。トムは、定番のピンクのスクーターで、二人組と一緒にマリーナに向かう(3枚目の写真)。
  
  
  

ここからは、映画の趣が変わり、船上でのアクションが主体となり、台詞はほとんどない。3人がマリーナに着くと、ヨットが動き初めている。トムは、「ビルめ!」と叫ぶと、桟橋の先端まで全力疾走するが、そこで急停止。トムは泳げないのだ。それを知っているボスも、あざ笑いながら桟橋の前を通り過ぎて行く。アビガイルの「助けて!」という叫び声が聞こえると、薬の効果を信じたトムは、思い切って海に飛び込む(1枚目の写真、姿勢が凄くいい)。そして、ヨットに追いつき(2枚目の写真)、ロープを伝って這い上がると、操舵室に行ってキーを抜き取り、船首へと走る。さらに、マストの下に置いてあった油を、追って来たボスの足元に向かってぶちまける。ボスは油で足を滑らせる(3枚目の写真、矢印は甲板にまかれた油)。
  
  
  

トムが、船首のハッチのところで、「アビガイル」と呼んでいる間に、体勢を立て直したボスは、フック棒を手にすると、トムをバウスプリットに追い詰める。ネットに落ちたトムに向かって、ボスは何度もフック棒で突き刺そうとするが(1枚目の写真)、トムは 何とかかわして船室の角に隠れる。ボスが今度手にしているのは水中銃。フック棒よりは遥かに危険な武器だ。だからトムもかなり怯えている(2枚目の写真)。しかし、それでも、マストに消火器があるのを見つけると、こっそりマストまで行き、「ビル!」と叫ぶ。そして、相手が銛を発射する前に、顔目がけて消火液を噴射する。泡で目をやられたボスは、トムが機転をきかせて押したブーム(帆桁)に当たって海に落ちる(3枚目の写真)。
  
  
  

トムは、ハッチを開けて、アビガイルを引っ張り出すことに成功(1枚目の写真)。しかし、トムがアビガイルをマストの横に座らせておいて、操舵室に入りダイヤモンドの入ったケースを探している間に、ボスが海からヨットに登ってくる。そして、アビガイルの後ろから忍び寄り、両腕で抱えると、バウスプリットの先端まで行く。「トム、この子を海に放り込むぞ!」。「彼女を放せ! さもないとダイヤモンドを捨てるぞ!」。「ダイヤモンドを捨てたら、この子を放り込む!」。「僕たちをヨットから降ろせ。そしたら、好きなようにするがいい」。「交渉できる立場だと思うか? ケースを置け。でないと放り込むぞ!」。仕方なく、トムはケースを下に置く。ボスはアビガイルを放してケースに向かい、トムはブームに掛けてあった細長い布を手に取る。そして、布の両端を持ち、アビガイルの「亀」を先端に入れると、投石器のようにぐるぐると回す。「亀」は見事にボスの額に当たり(3枚目の写真、矢印は投石器代わりの細長い布)、ボスはケースを落として、甲板の上に倒れ伏す。ここまで約5分、時間は短いが、子供の映画にしては密度の濃いアクションで、トム・アヴニの奮闘ぶりが格好いい。
  
  
  

そこに、教授の通報を受けて、ようやく警察が到着〔トムは、いつ教授に「マリーナに行く」と連絡したのだろう?〕。ボスは逮捕され、教授が拍手してトムを迎える。トムは、アビガイルに「亀」を見せる。「君の亀、壊れちゃった」。「別の作ってあげる」。トムがもう一度亀をよく見ると、2つに割れた中に小さな首が入っている。「言った通りでしょ」。教授が、「トム、また、新聞の一面だな」と言うと、「ううん、今度は真実を言うよ。薬のお陰だってね」と謙虚に答える。「いいや、トム、今度は違うぞ。薬じゃない。あれは水だった。私が渡したのは普通の水。H2O、ただの水なんだ。胃けいれんの時に渡したのも同じだ」。「まさか、ホント? H2Oって、ただの水なの?」。「そうだ」。「でも、泳げたよ」。「ああ、君が自力でやったんだ。自分で恐怖を乗り越えた」(1枚目の写真)「いいかね、これこそ、我々の最大の発見なんだ」。数日後、教授は自宅の庭にトムのクラスの子供達を集めてパーティを開く。二人組も参加している。トムは、当然、アビガイルと一緒にいる。アビガイル:「すべて元通りになったわね」。トム:「僕は、スーパー・ボーイじゃなくなったしね」。「私にはとっては、まだスーパーよ」。その言葉に勇気を得て、トムは、「アビガイル、訊きたいことがあるんだ」。「どうぞ」。トムが恥ずかしげに微笑む(2枚目の写真)。そして、思い切って、「アビガイル、僕のガールフレンドになってくれる?」。アビガイルは 嬉しそうに頷く。トムはアビガイルが持っていた風船をたぐり寄せ(3枚目の写真)、2人の顔を隠すと…
  
  
  

     T の先頭に戻る                    の先頭に戻る
     イスラエル の先頭に戻る             1990年代後半 の先頭に戻る

ページの先頭へ